記憶の屑籠

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中室牧子『「学力」の経済学』ディスカヴァートゥエンティワン

「データ」を用いて学力を議論する本。哲学っぽい教育書とは違った風味。

経済学というだけあって、本の中には図表が多い。

昨今、テレビなどで教育関係者が、○○は良い、○○はダメだなど言ってるのを聞いて振り回される親も多いだろう。この本では、経済学の観点からデータを用い、効果があるかないかを判断する。

 

第1章

年収の高さと学力について。個人的には、年収が高い=首都圏という環境が大きいと思っている。東京には科学館や博物館などがたくさんある。地方から出てきて科学館などに行ったりすると、親子で来ている人がたくさんいる。珍しいアニマルカフェに行った時も親子で来た客を見てなんと羨ましいと思ったことか。地元にも一応は科学館くらいならある。しかし、数が違うし、イベントの多さも違う。そうして幼少期から関心の高さといったところで違いが出てくるのだと思う。地方からだと、詰め込みで東大に入る人はいても、真に学問に関心を持って学力が高くなる人は少ないのではないだろうか。

因果関係と相関関係についても書かれている。この違いを明確に説明できる人は案外少ないかもしれない。恥ずかしながら私は違いは分かるが説明しろと言われるとしどろもどろになると思う。この違いをメディアが利用しているのだということが分かった。

 

第2章

子育て中の親御さんが気になること盛りだくさんな章。印象的だったのは、「テストの点数(アウトプット)」と「本を読む(インプット)」のどちらにご褒美を与えると良いのかという問題。私は、アウトプットの方だと思いましたが違った。その理由はデータを基に解説されている。アウトプットにご褒美を与えるのは無意味というわけではなく、条件付きで効果があるようだ。

後半は心理学も登場し、子育て世代の疑問について科学的に解説していきます。予想通りのもの、意外なもの両方あった。

 

第3章

 非認知能力がキーワード。これが人生の成功に大きく影響するという内容。学校に通って高校を卒業した人と、日本でいう高卒認定に合格した人の年収を比べると、前者の方が高いらしい。私は、通信制高校卒なので、統計学的に将来の年収は低くなると予測される。なんだか悲しい事実だ。

 

第4章

小人数学級の効果について。1クラス20人以下にすると、学力が高くなるという実験結果がある。しかし、闇雲に20人以下にすればいいというわけではないようだ。経済学から見ると費用対効果は低いらしい。確かに、教師の数を2倍にするとなるとかなりのお金が必要だ。しかも、その効果はほとんどないとなると、わざわざ少人数学級にする必要性はなさそうだ。きめ細やかな指導ができて学力が上がるのでは?と思っていたので意外だった。

貧困世帯と低学力についても触れられている。私は貧困世帯の子どもたちへの学習支援のボランティアを行っているが、確かに低学力の子どもが多い。さらに、低学力の影響があるのかは分からないが、自己肯定感が低いなど非認知能力が低いとも感じる。バイトではなくボランティアというところにも予算がないということが分かる。もっと予算を投じ、そこで働く人たちの給料を上げたり、データを収集したりできたらいいのにと思う。

 

第5章 

いい先生とは。カリフォルニアでは教員の名前が分かれば、その教員の、教員の質の指標の一つである付加価値をウェブ上で見ることができることには驚いた。どうすれば教員の質を高めることができるのか。単純に成果主義にしたり、研修をすればいいというわけではないのが分かった。成果によるボーナスの変化も与え方を工夫する必要があるとのことだった。

 

経済学の視点から学力を見るのは新しかった。文字も大きめで大事なところは太字になっているので、あまり本を読まない人も読みやすい本だと思う。