記憶の屑籠

考えたこと買ったもの。いろいろ詰め込む雑記ブログ

『いじめとは何か』(中公新書)

”いじめ”の考え方の土台を作ってくれる本。

タイトル通り、いじめとは何かについて

いじめの発見、各国のいじめ研究の歴史、日本との比較

が丁寧に書かれている。全6章あるが、3章になって

やっといじめの定義について書かれている。

 

日本がいじめ研究先進国だというのは意外だった。

教育関係は欧米の後を追ってるイメージがあるからだ。

日本はいじめに対して被害者個人の救済を行おうとするのに対し、

欧米は社会の安全を守る方に意識が向かうことや、

社会問題と捉えるか非行問題と捉えるかの違いなど

アプローチの仕方が違うため、また言語の関係もあって

日本のいじめ研究が独自に発展していったことには納得できる。

しかし、その時期が早かったのには驚いた。

 

いじめのニュースが流れると教師(学校)がいじめを認識していなかった

と報道されることがよくある。しかし、実際は日本の教師の認知率は高く

ほとんどの教師がなくそうと努力し、実際に被害がなくなった、少なくなった

と半数以上が答えている。外からの歯止めにより、かなりの数のいじめは

深刻化していないことが分かる。

 

4章にある傍観者と仲裁者の出現比率のグラフは興味深い。

「傍観者も加害者」という”知識”は持っている人が多いだろう。

いじめは悪いことと認識していてこの知識があれば、成長するにつれて

傍観者が減っていくはずである。イギリス、オランダでは中学生になると

傍観者は減少する。しかし、日本は増加し続けるのだ。この事実をどう受け止め

どう改善していくかは今後の課題だろう。

 

5章に入ると私事化の良い面悪い面両方について説明され

後半から6章まで具体的な対策について書かれている。

ここで印象的だったのは、日本は「官」に頼り過ぎているということである。

国が教育にもっとお金を出せば、公共機関でなんとかしてくれ…

そう思う人が日本には多いのではないだろうか。

教育予算については同意だが、「公」からの供給をただ待っている人が

多いように思う。社会的なつながりの修復などサポートは日本の場合、

NPOやボランティアばかりである。

それに対しヨーロッパでは社会的企業コミュニティビジネスなど

ビジネス展開されている。

NPOが悪いわけではないが、どうしても働く側の収入や待遇を考えると

人材の意味でも限界があると思う。

日本では、なぜビジネス展開されないのだろうか。

子どもの心を扱うことでお金を儲けるというのは印象が良くないということなのだろうか。私はNPOで学習支援のボランティアをやっているが、

もっとお金がもらえれば(個人の収入に限らず予算という意味でも)

活動内容を充実させることができるのに…と思っている。

 

市民性教育に関しては、知識0だったのでこれから勉強していこうと思う。

ソーシャル・ボンド理論は想像もしやすく分かりやすかった。