記憶の屑籠

考えたこと買ったもの。いろいろ詰め込む雑記ブログ

シュタイナー教育に触れて

半年以上前のことであるが、シュタイナー学園のオープンデイに行ってきたときのことを忘れないうちに書いておこうと思う。

 

そもそもなぜ行こうかと思ったかというと、オルタナティブ教育に関心があり、実際に見学したいなと思っていた。そこで色々調べてみるも、学校の授業の関係で行けるところがなかなか見つからなかった。その時、たまたまシュタイナー学園のオープンデイがあるとのことで、これはいい機会だと思い、行くことにした。

 

この学校は、日本初のシュタイナー学校で、学校法人である。シュタイナー教育は、オルタナティブ教育の中で特に芸術に力を入れている。生徒の展示物はどの科目のものも、とても綺麗な色が使われていた。もちろん芸術作品は、これが本当に10代の子が作ったものなのかと驚くものばかりであった。自分が理系なので、理系科目のノートを特に見ていたが、綺麗な色をしているだけでなく教科書よりも分かりやすい。本質の理解に重点を置いているのが分かる。そして美しかった。それは芸術的にという意味ももちろんだが、数学や理科の摂理がとにかく美しく見入ってしまった。

 

体験授業も受けてきた。黄金比の授業だ。フォルメンと迷ったが、どの様に授業展開していくかに興味があったので、既に自分が知っている分野にした。この授業は中学2年生相当と言っていた。

フィボナッチのウサギのつがいの話から始まった。その話からフィボナッチ数列ということを教わり、黄金比が表れることを知る。そして、植物や絵にも黄金比が隠れている話を聞いた。ウサギ役を生徒にやらせたり、答えを予想したりとここまでは他の学校でも行われるレベルのアクティブラーニングだなという印象。

そして次に黄金比定規なるものが出てくる。これは、1:1.6になる点で2つの定規を交差させ止める。ハサミの様に動くようになっていて、短い方で長さを測り、幅を変えずに逆さまにすると測ったものの1.6倍の長さが分かる。これを使いペアになり、お互いの体の中の黄金比を探した。事前にどこが黄金比になるか教えてもらっているので、実際にそうなのか黄金比定規を用いて確認するのだ。その後は、宇宙にも黄金比があるんだよという話になる。これもただ知識を教えるのではなく、先生たちが天体役になり動いていくうちに、だんだん黄金比が表れるのが分かるようになっている。

最後に中学2年生という自分の体を気にし始める年齢の子どもに「自分の体は黄金比に近づいている(美しく変化している)」という隠れたメッセージがこの授業にあるということを言い、授業は終わった。

授業の後半は初めて知るものが多かった。自分は手足が短いと思っていたが、ちゃんと黄金比になっているみたいで嬉しかった。芸術的な授業とはこういうことなのかと理解できた。劇や演奏も聴いて、大満足で帰路についた。

 

昨今、アクティブラーニングという言葉が流行っているが、これが本物なんだなと思った。教師の負担が凄いので、これを公教育でというのは無理があるだろう。しかし、このような体験ができる学校は日本にはほとんどない。モンテッソーリやシュタイナーは幼児教育では見られるようになってきた。小学校以上でこのようなオルタナティブ教育を取り入れているところがあまりにも少なすぎる。今回オープンデイに参加してシュタイナーの一番のデメリットは親の負担だと思った。劇などは子どもたちの発表会に当たるので、保護者も多く見に来ていた。その時近くに座っていたお母さんたちの聞こえてくる会話を聞いてそう思った。毎日のお弁当や衣装も手作り。人工物はあまり好まれていないので安物で済ませるのも難しい。これでは普及していかないのも無理はない。

 

私は、公教育はダメでオルタナティブ教育こそが素晴らしいと思っているわけではない。受ける教育を選択できるようにするべきだと思っている。全ての人に合う教育なんて存在しない。そんなこと誰でも分かっているはずだ。なのに、日本で受けられる教育はどの学校に行こうがほとんど同じである。今の公教育が合っている子はそれでいい。しかし、そうじゃない子は本当に生き辛い。仮に、そういう子がシュタイナー学園に転校しても現状では適応できるか疑問である。公教育とオルタナティブ教育の互換性がないからだ。オランダでは、この子にはモンテッソーリが合っていたけど下の子は合わないみたいだから別の学校に転校するというのが普通にあるらしい。その時、先生側からもここの学校がいいんじゃないかと提案されたりもするそう。自分に合った教育を受ける・選べるオランダの教育環境は素晴らしいと思った。日本もそのままマネをすればいいとは思わない。今の日本の制度では効果がないだろう。国が予算を増やすこともだが、現場の教師がもっと自由に動けなければ意味がない。教科書を学校ごとに自由に選べるなど学校ごとの色を出せる環境作りが今の日本の課題だと思う。

 

 

なお、オランダの話は、リヒテルズ直子、苫野一徳著『公教育をイチから考えよう』日本評論社 を参考にした。